好きを私にください。
俺は病室に行くと、イスをガーツと引きずって、ベッドの側に持っていった。


「明海。」


もう点滴しか刺さってない明海。

酸素マスク…だっけ?も、もう必要ないってことで。


「あのおばあさんの旦那さんな、今日明日が峠なんだと。」


俺は毎日話しかけてる。


明海が聞いてくれてる気がするからな。


イスに座りながら、明海の腕を握った。



「明海、もう12月だぞ?いい加減目ぇ覚ませよなぁー。」


12月とか、カップルだらけなんだけど。


「俺、切ないんだけど。って言っても、受験生のアンタと先生の俺には、クリスマスなんか無いけどな。塾でしっかり潰れるし。」


そう、潰れるんだ。


「明海ー、クリスマス、塾でも話せないとか寂しんだけど。」


亮にまかせっきりだから俺あんま関係ねぇけど…。









「…せ…んせ。」









明海の口から


そんな言葉が、零れた。




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