好きを私にください。
「ね、長いよね。」


だからこそ、あたしの入る隙なんかないのに…。


「じゃあお前、ムチャクチャ厳しーじゃん。」


サラッと言うお兄ちゃん。

分かってる、そんなの。


人に言われると尚更実感がわくもんだ。


「分かってる、分かってるよ。」


あたしはそっと俯いた。

目には涙が溜まっていて、今にも零れ落ちてしまいそうだった。


「それでも、好きなんだもん…!!!」



あたしは、数ヶ月前を思い出した。


あれは、まだ寒くて、雪が降ってるような時期だった。
2月下旬。

あたしは塾の体験に行ったんだ。



その日は初めての授業で、少し緊張してた。


ドキドキして、緊張して。

先生はどんな人なのかとか、いろいろ。


そして、初めての授業。


教科は、理科。



そう、高里先生の授業だったんだ…。



この時は好きでもなんでもなかった。

第一、あたしには当時好きな人がいたし。


けど、それはあたしが気付いて無かっただけで。



この時にはもう、惹かれてたんだと思う…。


初めての授業が終わる頃には、先生はあたしの中でかなりお気に入りの類に入ってたんだ。



「明海…。」


お兄ちゃんの声で我に帰る。
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