不器用なシタゴコロ
「…顔、上げて?」
頭の上で聞こえる甘い囁き。
とーやクンの片手は。
私と指を絡ませ。
片手はそっと私の頬に手を添えた。
…顔を上げたら。
その先はわかってる。
とーやクンとはつきあってるワケでもなんでもない。
友達なのかなんなのかすらわからない。
それなのにいいの?!
理性はそう訴える。
でも。
私はお酒にも。
雰囲気にも。
…とーやクンにも。
飲まれてしまっていたんだろう。
「…柚…」
本能は意地悪く囁いた。
“とーやクンに触れてみたい”って。
甘く囁かれた自分の名前。
頬に添えられたとーやクンの骨っぽい手。
その動きに抗うこともせず。
私は、まぶたを閉じた。