不器用なシタゴコロ

誰かが頼んでおいてくれたのか。

私の目の前には。

冷えたジョッキに入ったビールが置いてあって。





「ゆずチャンが来たところで…
もう一度カンパーイ!!」





亮チャンが自分のジョッキを高々と上げて。

みんなを煽った。





…私もその煽りにのっかって。

ジョッキを軽く持ち上げる。





「…お疲れさまデス」

『お、お疲れさまです!!』





隣に座るモモクンとジョッキを合わせると。

カツン、と。

ガラスが合わさる涼しげな音が鳴った。





その音と同時に。

モモクンが“フッ”と口元を緩めた。





「今日、暑かったからビールうまいよ?」

『…ッ!!』





いつもなら美味しい仕事が終わった後の冷えたビール。



だけど。

ドキドキと高鳴っていく心臓のせいなのか。

“2sbBと飲み”っていう緊張のせいなのか。

…なんなのか。



味なんてさっぱりわからなかった。



 

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