不器用なシタゴコロ
いつまでもここにいるわけにもいかないし。
戻らなきゃ…。
洗面所に来てから何度目かになるため息を吐くと。
私はまた部屋に戻るべく足を進めた。
「………って」
「…が……だろ?!」
「……ば……じゃん」
部屋の戸を開けようとしたとき。
中から話し声が聞こえてきた。
ミズキクンとモモクン、だよね…。
戸越しに聞こえてくる声は。
穏やかなものではなくて。
ケンカしてるようにも聞こえる…。
中に入っていけるような雰囲気でもなかったから。
仕方なく戸の前にしゃがみこんだ。
「ゆずチャン……だろ?」
「うるせぇ……よ!!」
え?
ゆずチャン?
それって…。
不意に聞こえた自分の名前に。
私は思わず戸に近づき耳を澄ませた。