不器用なシタゴコロ
「戻ってきたトコで悪いんだけど。
俺、用事ができちゃってさ。
ケイチャンと亮チャンは事務所呼ばれたって連絡きて行っちゃったから。
よければモモと飲んでくれる?」
ミズキクンは。
申し訳なさそうに手を合わせてそう言った。
1ヵ月前の私なら。
モモクンとお酒が飲めるなんてシチュエーション。
夢で見れただけでも幸せだった。
でも今は。
自分の目で見た疑惑と。
ミズキクンの言葉が引っ掛かって。
手放しに喜べない。
「こっちから誘ったのにホントゴメン。
会計はモモに任せちゃっていいからね」
当たり前のことながら。
私の胸の内なんて知るはずもないミズキクンは。
「じゃあね」と手を振って。
雑誌で見るような笑顔を残して背を向けた。
チラリ。
部屋の中を見ると。
こちらも何事もなかったかのようにグラスに口をつけるモモクンが。
壁に寄り掛かっていた。