不器用なシタゴコロ
「…誰だ、って言われても。
“タチバナ トウヤ”としか答えようがありませんケド」
疑うなら免許証出そうか、と。
そう付け加える彼は。
不機嫌なのはそのままに。
呆れたようにため息を吐きながら言葉を発する。
“タチバナ トウヤ”
それが彼のフルネーム。
こんな状況なのに。
新しく知った事実が嬉しいなんて。
…どうかしてるよね、私。
でも。
私が今知りたいのはそんなことじゃないんだ。
眉間のシワが深まってるのは気付かないふり。
私は。
彼の顔をしっかりと見据えて言葉を発した。
『…今、私の目の前にいるのは“モモクン”なの?
それとも“とーやクン”なの?』