不器用なシタゴコロ
vol.09
“俺、酒飲んでないからさ。
柚の車運転してくよ”
そう言って運転席に乗り込んだ彼は。
今、私の車のハンドルを握っている。
…なんか不思議な感じ。
自分の車を違う誰かが運転してるって。
ボリュームを下げたオーディオから流れてくる音楽も。
車内に香る少し甘い香りも。
いつもと何も変わらないのに。
別空間に来ちゃったみたいな感じがするよ…。
ハンドルを握る横顔をチラリ。
盗み見すると。
水族館に行ったときと同じ横顔がそこにはあった。
…キレーな鼻筋。
“スッ”としてるよね。
…睫毛も長いし。
羨ましいくらい。
…肌もキレーだし。
その辺の“女の子”より。
よっぽと女の子らしい顔立ちしてる…。
…なんか“女”である私の方がダメっぽくない…?
…プッ…。
その時。
隣から小さく吹き出す音が聞こえた。