不器用なシタゴコロ

そのままクスクスと笑いながら。

彼は言葉を発した。





「なに1人で百面相してんの?」

『へッ?!』

「ボーっとしてんなぁ、と思ったらこっち向いてるし。
こっち向いてんなぁ、と思ったら眉間にシワ寄るし」





ハンドルを握り顔は前を向けたまま。

口元を緩ませ、横目でチラリ。

視線だけを私に向けた。





『……や〜…えっと…』





うわ〜…。

見てたの気付かれてた…。





恥ずかしさと気まずさのせいで。

背中にツツッと冷や汗が走る。





「…まぁ、どんな顔しててもいいケド」

『…ッ?!』

「運転中だから変顔はやめてね」





横顔しか見れないから。

どんな顔してるのかわからないけど。

口元を緩ませた彼が。

“ポンッ”と頭の上に置いた手は。

すごく温かかった。



 

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