不器用なシタゴコロ

『…おじゃま、します…』

「…どーぞ」





手を繋いだまま。

無言で乗せられたエレベーターを降りた5階。

彼の部屋は5階の一番奥の部屋だった。





「テキトーに座ってて?
今、なんか持っていくから」





私をリビングに案内するなり。

彼はキッチンへと歩いていった。





黒いソファーは大きなテレビが見やすい位置に置かれてて。

ソファーの前にはちょっと歪んだ形のローテーブル。

打ちっぱなしのコンクリートの壁には。

いぶし銀のような色をしたフレームに納まってるイルカの絵。

部屋の隅には観葉植物。





オシャレな部屋だなぁ…。





初めて来た部屋に落ち着かないのと。

好奇心が手伝って。

リビングをウロウロする私。





リビングとダイニングキッチンが扉で仕切られてるっていいなぁ。

ウチなんか全部で一部屋って感じだし。





「…こら。なに物色してんの」

『ひゃッ!!』





背後から突然かけられた声に振り向くと。

そこには。

片手にビール、片手におつまみらしきものを持った彼が立っていた。



 

< 189 / 340 >

この作品をシェア

pagetop