不器用なシタゴコロ
『…おじゃま、します…』
「…どーぞ」
手を繋いだまま。
無言で乗せられたエレベーターを降りた5階。
彼の部屋は5階の一番奥の部屋だった。
「テキトーに座ってて?
今、なんか持っていくから」
私をリビングに案内するなり。
彼はキッチンへと歩いていった。
黒いソファーは大きなテレビが見やすい位置に置かれてて。
ソファーの前にはちょっと歪んだ形のローテーブル。
打ちっぱなしのコンクリートの壁には。
いぶし銀のような色をしたフレームに納まってるイルカの絵。
部屋の隅には観葉植物。
オシャレな部屋だなぁ…。
初めて来た部屋に落ち着かないのと。
好奇心が手伝って。
リビングをウロウロする私。
リビングとダイニングキッチンが扉で仕切られてるっていいなぁ。
ウチなんか全部で一部屋って感じだし。
「…こら。なに物色してんの」
『ひゃッ!!』
背後から突然かけられた声に振り向くと。
そこには。
片手にビール、片手におつまみらしきものを持った彼が立っていた。