不器用なシタゴコロ

「…はい」





拾ったものとはいえ。

他人のケータイに出てしまった罪悪感からか。

声が小さくなってしまう。





「あ、とーやぁ?俺、俺ー」





電話口の“瑞希くん”が話しだす。





でも。

返事ができない。

…早く言わなきゃ。





言わなきゃって思うほど。

声が出なくなる。





「今日の打ち合わせのことだけどー…」

「とーや?聞いてる?」





“とーや”という言葉を何度も聞く。

彼は、“とーや”っていうのかな…?





“瑞希くん”は返事をしない“とーや”に話をしてる。





「おーい、とーやくーん?…あれ?間違えました?…って、んなわけねぇよな、履歴からかけてるし」





“瑞希くん”は。

電話の向こうでブツブツ言い始めた。





「とーや、なんとか言えっての」





早く、言わなきゃ…。





「…このケータイ、拾ったんで、持ち主の方に連絡していただけますか…っ」



 

< 19 / 340 >

この作品をシェア

pagetop