不器用なシタゴコロ
「…ココ?」
『…みたいだね…』
チケットに記載されてる番号と。
今、いる席の番号を見合わせると。
そこは。
「めっちゃ近くない?!」
『こんなに近いなんて聞いてない〜…』
一番端だったけど。
これからメンバーが立つステージから僅か数メートルのところだった。
「どうしよ〜!!目が合ったら倒れそう」
沙保は“どうしよ〜”と言いつつも。
全然困った顔なんかしてなくて。
…寧ろ嬉しそう…。
そんなことより。
こんなに近いんじゃ動き回るボーカルのミズキクンどころか。
とーやクンにも見つかっちゃうんじゃ…。
…せめてとーやクンの立ち位置が反対側でありますように…。
気付くと会場は熱気と人で溢れていて。
異世界に紛れ込んだような気分になる。
その時。
会場内の照明が消え。
ゆっくりとした音楽と。
ステージを照らすスポットライトと共に。
幕が上がる。
割れんばかりの大きな歓声が。
会場内に響きわたった。