不器用なシタゴコロ

「も〜、楽しかった!!
ﾐｽﾞｷも間近で見れたし最高!!」





ﾗｲﾌﾞが終わって。

人影が疎らになった会場を後にする沙保と私。



ﾗｲﾌﾞ中のﾃﾝｼｮﾝから抜けられなくて。

沙保は未だ興奮状態だけど…。





「そーいえば、柚」



2、3歩先を歩く沙保がｸﾙﾘ、と振り返った。





「ﾓﾓに名前呼ばれたねぇ〜」





ﾆﾔﾆﾔしながら私に近づいてくる沙保から。

少し後退りする私。





『だ、ってｱﾚは猫の名前じゃん』

「でもさ。
大好きなﾓﾓに“ゆず”とか言われてﾄﾞｷｯとしなかった〜？」





私もﾐｽﾞｷに“沙保”って呼ばれた〜い、なんて。

ひとりでｷｬｱｷｬｱ言ってる沙保を横目に。

私は小さくため息を吐いた。