不器用なシタゴコロ

そして。

ブレスレットとは反対のポケットに。

ケータイが入っていることを確かめると。





『…ちょっと、ゴメン』





そう言って席を立った。





まだ忙しいよね。

ライブ終わったばっかだし。





でも、今の私には。

相手の都合とか状況とか。

そんなもの考える余裕すらなくて。





…今、どうしても。

とーやクンと話がしたかった。





お店の外に出て。

ケータイの電話帳を開く。





親指が“桃夜クン”を探しだした。





私からかける初めての電話。



でも躊躇うことなく。

親指は発信ボタンを押した。





…ほんの少し。

ボタンを押す指が震えていたのは。

無意識のうちに。

緊張していたからなのかもしれない。



 

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