不器用なシタゴコロ
vol.12
「…今、マンションの下にいるんだけど…出てこれる?」
とーやクンからそう電話がきたのは。
日付が変わって2時間ほど過ぎてからのことだった。
「遅くなってゴメン」
『ん…大丈夫…』
マンションのエントランスを出た入り口に。
とーやクンは寄り掛かっていた。
…なんか不思議な感じがする。
さっきまでステージの上で。
ライトと歓声をめいっぱい受けてた人が。
今、目の前にいる…なんて。
「…なに?何か俺、おかしい?」
『へッ?』
「いや、かなり凝視されてる気がするんですケド…」
少し気まずそうに。
宙を泳ぐとーやクンの視線。
『やッ…き、気のせい!!気のせいだって!!』
…言えない。
とーやクンを見てたなんて。
恥ずかしくて言えないでしょ…。