不器用なシタゴコロ
“イヤなら全力で拒否って”
そう言って重ねられた唇は。
決して強引ではなく。
挟んでは吸い付き。
吸い付いてはまた挟まれる。
…拒否なんて、できるわけない。
この優しい唇に。
抗う術なんて。
持ち合わせてなんていない…。
その時。
“フッ”と唇に感覚がなくなった。
『…とーや、クン…?』
離されたのは唇だけじゃなくて。
手のひらに包まれていた頬も。
今は生温い夜風にあたっている。
「…なんで、拒否んねぇの?」
『え…?』
「拒否ってくれなきゃ…止まんなくなるっつーの…ッ」
そう言って。
とーやクン私の腕を掴み。
歩きだした。