不器用なシタゴコロ

膝を抱えて、ギュッと目を瞑ると。

頭の中に声が響く。





―…なにため息ばっか吐いてんの

『やっぱりからかわれてるのかなって』

―…誰に?

『とーやクン』

―…なんでそう思うの?

『相手はアーティストだよ?
私が相手される理由がわかんない』

―…好きだって言ってるのに?

『はっきり言われたんじゃないもん』

―…不安?

『不安っていうか…信じていいのかな、って…』

―…どうすればそれは解消される?

『…顔見て、名前呼んで。
それで好きだって言ってほしい。
とーやクンが好きなのは“私”なんだって。
そう感じたい』







「…それは俺も同じなんですケド…?」







『…え?』





頭の中で響いていた声が。

妙にクリアになった瞬間。

目の前に現れたのは知ってる顔。





『と、と、とーやクンッ?!』





いつ戻ってきたのかわからない。

とーやクンは真っ白なタオルを被ったまま。

私の目の前にしゃがみこんでいた。



 

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