不器用なシタゴコロ
『え…ッ、ちょっ…待…ッ!!』
「もう待たない。
これ以上何を待てっつーんだよ」
フワリ。
体が宙に浮く。
膝の後ろに腕を差し込まれ。
抱き抱えられてる私。
…俗に言う“お姫様抱っこ”ってヤツ…。
地面は遠くなるし。
顔は近くなるし。
どうすればいいの?!
恥ずかしくて顔が上げられなくて。
とーやクンのTシャツに顔を隠した。
「…あっち、行くよ」
そう言って私を抱き抱えたまま歩きだしたとーやクンは。
リビングに接してる隣の部屋の戸を開けた。
…もうそこがどこなのか、なんて。
聞くだけ野暮って話…。
戸の向こう側は。
黒とグレーと白の世界。
キレイに整えられたダブルベッドが置かれた。
とーやクンの寝室だった。