不器用なシタゴコロ
前の時は。
ミズキクンだってわかってたから。
何も考えずに近寄れたけど。
…イヤだな…。
誰だかわかんないし。
ひょっとしたら。
変質者だったりして…。
でも。
そこを通らないと駐車場には入れないから。
なるべく距離をとるようにして横を通り過ぎようとした。
その時。
「…お疲れ」
『はッ?!』
な、なにッ?!
“お疲れ”って。
誰に言ったの?!
てか、誰?!
周りを見ても私以外誰もいなくて。
私が話し掛けられたことだけは確からしい。
その声に慌てて横を向くと。
「…声くらい覚えてって、前に言ったじゃんよ…」
そこには。
ポールから腰を浮かせて。
苦笑いを浮かべるミズキクンがいた。