不器用なシタゴコロ

「…こんばんは」





さっきの“瑞希くん”の声とは違う。

高くもなく、低くもない。

ちょっとハスキーな耳に残る優しい声が聞こえてきた。





「こ…こんばんは…」





ヤバッ。

声が裏返っちゃったじゃん!!

その恥ずかしさに体が熱を持ち始める。





「…ケータイ…拾ってくれて、ありがとう」





でも彼はそんなこと気にもしてないようで。

なんだかバツ悪そうに彼が話しだす。





「や、こちらこそ勝手に電話出ちゃってごめんなさい」

「でも電話出て拾ったの教えてくれたから助かったよ」

今度はテレくさそうな笑いを含んだ声。

「そう言ってもらえるとありがたいです…」

「でも出た電話が瑞希くんだってところは微妙かもね」

彼はアハハ、と笑った。





「じゃあケータイは…」





“瑞希くん”から聞いてるはず。

パン屋さんに預けて……。





私からもそう言葉を繋げようとしたとき。

彼が先に言葉を発した。





「明日、夕方って時間あります?」




 

< 30 / 340 >

この作品をシェア

pagetop