不器用なシタゴコロ
「…こんばんは」
さっきの“瑞希くん”の声とは違う。
高くもなく、低くもない。
ちょっとハスキーな耳に残る優しい声が聞こえてきた。
「こ…こんばんは…」
ヤバッ。
声が裏返っちゃったじゃん!!
その恥ずかしさに体が熱を持ち始める。
「…ケータイ…拾ってくれて、ありがとう」
でも彼はそんなこと気にもしてないようで。
なんだかバツ悪そうに彼が話しだす。
「や、こちらこそ勝手に電話出ちゃってごめんなさい」
「でも電話出て拾ったの教えてくれたから助かったよ」
今度はテレくさそうな笑いを含んだ声。
「そう言ってもらえるとありがたいです…」
「でも出た電話が瑞希くんだってところは微妙かもね」
彼はアハハ、と笑った。
「じゃあケータイは…」
“瑞希くん”から聞いてるはず。
パン屋さんに預けて……。
私からもそう言葉を繋げようとしたとき。
彼が先に言葉を発した。
「明日、夕方って時間あります?」