不器用なシタゴコロ

『…帰る…』





これ以上ここにいても仕方ない。

自分が惨めになるだけだよ…。





私はバッグを掴んで立ち上がった。

それを見て。

“ガタン”と大きな音を立て。

自分が座っていた椅子を倒しながらとーやクンは。

慌てて立ち上がった。





「ちょっ…待てって!!話、まだ終わっ…」

『納得いくまで話してもらおうと思ってたけど。
…私の心が保ちそうにないや』





とーやクンの言葉を遮って。

私はとーやクンの顔を見た。





ほんの数秒。

瞬きを1、2回したぐらいの時間。

とーやクンと視線が絡み合う。



でもそれはすぐに解かれて。

とーやクンは目を逸らした。





「…そんな顔させてんの、俺…なんだよな…」





ため息混じりに吐いた言葉は。

すごく悲しげで。

今にも泣いてしまいそうな声だった。





「…遠回りなんて、しなきゃよかった…」



 

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