不器用なシタゴコロ

「……明、日…?」

「ケータイ返してもらうの、明日で平気?」





彼は言った。





「俺、明日夕方からオフなんだけど…。予定、ある?」

「あ、仕事が終われば予定は…」





明日は早番だし。

夕方には終わる。

…って。

いやいやいやいや、違うでしょ!!

私はケータイをパン屋さんに…。





「いや、そうじゃなくて…っ!?」

「打ち合わせ始めますよー?」





私が声と被るようにして、彼の後ろでまた声がした。





「あ、ヤベッ。…じゃあ明日6時に、あのパン屋のところで」

「え、あ、ちょっ…!?」





プツン。

言うだけ言って、彼は電話を一方的に切った。





「…明日、6時にパン屋さん…?」





ケータイから聞こえてくるのは。

プープープーという無機質な機械音だけ。





私は。

また彼と会うことになったらしい……。



 

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