不器用なシタゴコロ

私の手を握るとーやクンの手は。

私の手より冷たくて。

ひんやりとした感覚が心地よかった。





そして。

射ぬくような真っ直ぐな瞳で私を見据えた。





「イヤなら全力で拒否って。
殴ってでもいいから拒否って」

『…え?』





ちょっと待って。

今のセリフ。

どこかで聞いた…。





それが何かと思い出そうとした。

その時。





『…ん…ッ?!』





思い出す隙も与えないかのように。

とーやクンの唇が私の唇を塞いだ。





『…んな…ッ…』

「好きだ」





酸素を取り込むべく。

ほんの少し唇が離れるたびに。





『…はぁ…ッ』

「…好き」





紡がれる“好き”の言葉。





…言葉だけじゃない。



とーやクンの唇が。

私を“好きだ”と言って離さない。



角度を変え、深さを変え。

私を捕えて離さない。



 

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