不器用なシタゴコロ

俯いた私の頬にそっと片手を添え。

私の顔を上げたとーやクンは。

視線ではなくて。

唇を合わせた。





…さっきまでとは違う。

触れるだけの優しいキスだった。





触れた唇から。

とーやクンの気持ちが伝わるように。

私の気持ちも。

とーやクンに伝わってるのかな…。





「…俺の唇…。
柚が好きだって言ってる…?」

『…うん…』

「唇だけじゃねぇよ?
“俺全部”で柚のコト好きなんだから」

『…うん…』





恥ずかしくて、とーやクンの胸に顔を埋めると。

耳元に響いてくる早鐘のような心臓の音。

ドクドクドク、と。

忙しない音が耳を伝わる。



それでも。

とーやクンが私にドキドキしてくれているこの音を。

もう少し感じていたかった。



 

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