不器用なシタゴコロ

「…やっと戻ってきた…」





腰にまわした腕に力を入れ、私を抱きしめると。

“ホッ”としたように。

耳元で小さくとーやクンが呟いた。





『…遠回りしすぎ…』

「自分でもわかってマス」

『だからミズキクンに蹴っ飛ばされるんだよ』

「…うるさいデス」





ライブで観たモモクンも。

雑誌に載ってた色気満載なモモクンも。

今、私を抱きしめてるとーやクンも。

みんな同じ人。





…なのに。





『ちゃんと“好き”って言ってくれればよかったのに…』





いつも中途半端にはぐらかされて。

曖昧な言葉ばかり。



ライブ中や雑誌に載るときの。

ドキドキさせる妖艶なパフォーマンスや甘いセリフは。

酔ってるときか…。





「…そんなの。
酒入ってるトキかエロモードになってなきゃ言えねぇっつーの」





テレ隠しなのか。

不貞腐れたようにそっぽを向いた。



 

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