不器用なシタゴコロ
いつの間にか。
決まってしまっていた約束。
私はケータイを返せればそれでよかったのに。
…でも。
手渡しできればそれが一番安全かも。
色々考えても仕方ないし。
そう思うことにして。
私は“彼”の黒いケータイをパタン、と閉じた。
……そういえば。
名前とか聞いてないや……。
たしか“瑞希くん”は“とーや”って呼んでたっけ。
私も名前言ってないけど。
待ち合わせてもわかるかなぁ?
顔見たのなんて、ほんの一瞬。
はっきり覚えてるのは。
あの“瞳”だけ…。
「あ…ふ…」
なんかホッとしたら。
急に眠くなってきた。
明日は早番だし。
早めに寝てしまうことにしよう…。