不器用なシタゴコロ

私の言葉に。

とーやクンがこっちを向いたのがわかった。





でも。

運転中の私は。

とーやクンと顔を合わせられない。



…視界の隅に入ってるとーやクンは。

ぼんやりとしか見えなくて。

どんな顔してるのかわからなかった。





なんて言われるんだろう。

とーやクンの口から。

どんな言葉が出てくるんだろう。





…心臓の動きが。

“ドキドキドキ”と増していくのがわかる。





数秒の沈黙が。

数時間にも感じるような静けさが車内を巡る。





……あ……。





信号が赤になり。

車をゆっくりと停車させた。





「…柚」

『なに、…ッ?!』





名前を呼ばれ。

とーやクンの方を向いた瞬間。



後頭部を引き寄せられ。

とーやクンの唇で。

私の唇が塞がれた。



 

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