不器用なシタゴコロ
…どうしよう。
嬉しい。
嬉しくて、言葉が出ない。
とーやクンの言葉が。
私の中を走り回る。
考えてないわけじゃなかった。
ちゃんと考えててくれてたんだ。
それなのに。
私、自分のことばっかり…。
「…返事は?」
とーやクンが頬を撫でていた指先で。
そっと私の唇に触れた。
…そんなの。
そんなの決まってるよ。
『彼女に、なる…ッ』
「…ん」
恥ずかしくて俯こうとした瞬間。
唇に触れていた指が顎に掛かり。
“クイッ”と上を向かされた。
『……え?』
いきなり視界が暗くなり。
『ん…ッ?!』
目の前にはとーやクンの顔。
そして。
感じた息苦しさは。
とーやクンの柔らかい唇で。
私の唇が塞がれたせいだと気付くのに。
そう時間はかからなかった。