不器用なシタゴコロ

『え…?』

「…英詞の訳。
頑張ってたからこれだけサービス」





“プイッ”と赤らんだ顔を背け。

そっぽを向いたとーやクンは。





「ケータイ落としたトキに賭けたんだ。
…柚が俺のキモチも拾ってくれるようにって…」





小さく、そう呟くと。

逃げるように立ち上がり。

キッチンへと歩いていった。





『…まだ、酔ってんの…?』





そんなはずないのはわかってる。

それでも。

今のセリフは恥ずかしい。



言われた私も恥ずかしいけど。

言ったとーやクンも相当恥ずかしいはずだ。





『…も〜…』





体が熱い。

顔なんて。

きっと真っ赤に違いない。



両手で挟めば手のひらのヒンヤリ感が。

頬の熱を奪ってくれる。





『言い逃げなんて、ズルい…ッ…』



 

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