不器用なシタゴコロ
パン屋さんは6時半が閉店。
その周りの商店も7時には閉店になる。
昼過ぎほどの賑やかさはないものの。
仕事帰りのお母さんがウロウロしてる。
そんな中。
1歩1歩パン屋さんに近づいていく。
“彼”はそこにいるのだろうか。
まだパン屋さんの軒下までは見えない。
……まぁ。
来ない、なんてことはないだろう。
今やケータイは生活の一部だし。
仕事の連絡もなにもケータイに入るはず。
…確か“瑞希くん”も打ち合わせがなんとかって言ってたし…。
あと少し。
あと少し。
軒下が見えてきた。
軒下が近づいてくるにつれて。
胸のドキドキが大きくなっていく。
ドキン、ドキン、ドキン…。
心臓の音が身体中に響き始めたとき。
軒下の自動販売機の横に、人影が見えた。