不器用なシタゴコロ
自動販売機の横には。
茶色い髪で背の高い男の人が立っていた。
ちょっと俯いてる。
しかもサングラスで顔がわからないけど…。
……この人、だっけ……?
まさかこんなことになると思ってなかったから。
“彼”のことで覚えているのは。
あの“瞳”だけ。
それなのに。
サングラスかけてたらわかんないって!!
…とりあえず待ってみようかな。
自動販売機とは反対の端で待ってることにして。
私はその男の人の前を通り過ぎた。
その時。
「…あの…っ!!」
男の人が顔を上げた。
「えっ?!」
「…ケータイ、拾ってくれた方ですよね…?」
時間は5時55分。
サングラスで顔はわからない。
……この人が、あの“彼”…なのか、な…?