不器用なシタゴコロ

「…ゴ、ハン…?」





“ゴハンでも”って…。

あんまり覚えてないけど。

カッコイイな、と思ったのは覚えてる。

それなのに。





……軽くナンパですかい……。





ちょっとため息が出そうになる。

目の前の彼はサングラスをかけたままだけど。

昨日の“彼”は。

“イイオトコ”だったと思う。





…でも。

いくらカッコよくてもナンパはいただけないよなぁ。





そんなコトを思っているのがわかったのか。

“彼”は下唇を触りながら話しだした。





「や、迷惑かけたし。お礼させて」





……お礼、ねぇ……。





「……忙しい?」





“彼”は私の顔を覗き込んできた。





「……忙しく、は…ないです……」





サングラスの奥の瞳はわからないけれど。

なんだかとっても優しく微笑まれた気がして。

つい。

“私は予定のない暇人です”と言わんばかりの。

情けない返事をしてしまった。



 

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