不器用なシタゴコロ

「そういえば、まだ名前も言ってなかったですよね」





……あ……そういえば……。

そんなコトすっかり忘れてた。

私。

名前も知らない人とゴハン食べるつもりだったのか?





「改めて。俺、“とーや”っていいます」





サングラスをとって顔を上げた“彼”は。

昨日見たまんま。

サラサラの茶色の長めの前髪から。

切れ長二重の瞳が弧を描いて覗いていた。

その瞳に、胸がドキドキするのをおさえながら。

私も言葉を発した。





「…私は、“ゆず”っていいます」

「…ゆず、サン?」

「そう、ゆず」





私がそう返事をすると。

“彼”…いや。

“とーやクン”がスッと右手を出した。





「よろしくね、ゆずサン」





ニッコリ微笑むとーやクンに。

またドキドキしながら。





「…よろしく、お願いします…」





私もおずおずと右手を差し出した。



 

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