不器用なシタゴコロ

それから。

とーやｸﾝおすすめの料理何品かと。

仕事上がりは飲みたくなる、と言いながら。

とーやｸﾝはﾋﾞｰﾙを。

私はｺﾝﾋﾞﾆに停めたままの車を思い出してｳｰﾛﾝ茶をｵｰﾀﾞｰした。





「ゆずｻﾝ、飲まないの？」





ｵｰﾀﾞｰした後。

とーやｸﾝが不思議そうに言った。





「飲まない、じゃなくて飲めないんです」

「お酒、弱いんだ」

「違くて。帰り、車だから」





そりゃあ、私だって飲みたいよ。

でも、こんな展開になるなんて思ってもなかったし。

ﾊﾟﾝ屋ｻﾝからｳﾁ、近いんだから。

…車、置いてくればよかった。





「じゃ、俺。ゆずｻﾝの代わりに飲んどきますね」

「うわー。代わりなんていらないし」





初めてちゃんと話をする。

ついさっき名前を聞いたばかり。

まともに会話をしたばかり。

…のはずなのに。





不思議と初めの緊張感もなく。

普通に話ができていた。