不器用なシタゴコロ

「じゃ、せめて半分…」

「いらないって」





そう言っても。

とーやクンは受け取ってくれない。

むしろ困った顔をしてる。





…どうしたらいいんだろ…。





「…一応、俺もオトコなんで。カッコつけさせてクダサイ」





プイッ。



口元を左手で覆いながら顔を背けるとーやクン。





お店の光に照らされて。

ほんのり頬が赤く染まっているようにも見える。





……そんな顔見せられたら。

これ以上何も言えなくなっちゃうじゃない。







「…じゃあ、遠慮なく。ごちそうさまでした」





私は手に持っていた数枚のお札を。

財布にしまった。





私の言葉にとーやクンは。





「いえいえ」





まだほんのり赤い顔を背けたまま。

そう言葉を発した。



 

< 54 / 340 >

この作品をシェア

pagetop