不器用なシタゴコロ
「…っと…もうこんな時間なんだ」
とーやクンが腕にはめているちょっとゴツめな時計に目をやった。
その言葉に。
私もケータイを取り出して時間を確認する。
ディスプレイに表示された時間は午後10時。
明日も早番だしな。
そろそろ帰らなきゃ…。
「飲み直ししよ、って言いたいとこだけどゆずサン車だし。俺も明日早いから」
ちょっぴり残念そうに聞こえるとーやクンの言葉に。
また意味もなく“ドキッ”としたりして。
「…車まで送るから」
ポケットからサングラスを取り出しながらとーやクンが言う。
「や、いいよ。ここから近いし」
車を停めているコンビニはすぐ近く。
お店は閉まってるけど、街灯に照らされて多少は明るい商店街。
「ゆずサンはよくても俺がイヤなの。黙って送られてクダサイ」
目を細め“フッ”と笑ったとーやクンを見て。
また“ドキッ”としてしまったのは。
気付かないフリをしてしまおう…。