不器用なシタゴコロ

それはいいにしても。





「…………………………」

「…………………………」





耳に入るのは勢いを増した雨の音ばかり。

なに、この重苦しい沈黙はっ!!

何話せばいいのかわかんない。

わかんないけどっ!!

沈黙は嫌いなのーっ!!





「な、なにか聴く?」





雨の音ばかりが耳に入ってくると。

気はさらに滅入ってくる。

私は、とーやクンの返事を待たずにオーディオの電源を入れた。





スピーカーから流れだしたのは。

私の好きなバンドの曲。





「…この曲…」





とーやクンが何かを思いついたような顔を見せた。





「あ、ゴメンね。インディーズだし知らないかな?」

「いや、知ってるよ。“2sbB”だよね」





俺一応、音楽関係の仕事だからね、と付け加えて。

とーやクンが小さく笑った。



 

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