不器用なシタゴコロ
落ち着いた大人の雰囲気が漂う店内に足を踏み入れると。
黒服のウェイターさんに頭を下げられる。
「…なんか場違いじゃない?」
「大丈夫だって。ちょっと豪華なディナーだと思いなよ」
「そうそう」
この雰囲気に腰の引けそうな私とは正反対に。
沙保となみサンはかなりやる気だ。
誰でもいいから、助けてぇ…。
そんな心の叫びは誰にも届くはずもなく。
沙保となみサンに連行される私は。
周りからどーゆー風に見られているんだろう。
「あ、いたいた」
今日何度目かになるため息を吐いた私の横で。
沙保が小さく呟いた。
その声に顔を上げると。
奥のテーブルで立ち上がるジャケット姿の男の人が見えた。