不器用なシタゴコロ
ここは居酒屋じゃないうえに。
黒服のウェイターさんなんているお洒落なお店。
ビール片手に「はい、お疲れさーん、カンパーイ」なんて。
そんなことができる雰囲気は全然ない。
「6人の出会いを祝して…乾杯」
シャンパンが注がれたラインの細いグラスが。
“カチ”と小さな音を立ててぶつかり合う。
あーっ!!
仕事終わりはやっぱりビールがいいーっ!!
シャンパンなんて物足りないって!!
そうは思うものの。
それを口に出す勇気もなく。
キラキラ泡を光らせるシャンパンに小さく口をつけた。
「お医者さんに弁護士さんに社長さんなんてすごい!!」
「いやいや、俺らなんてまだまだだよ」
「謙遜しないでくださいよぉ!!」
シャンパンに始まり。
テーブルに並べられた料理に手をつけはじめた頃には。
私以外の5人は話に花を咲かせていた。