不器用なシタゴコロ

「…ん？」





開いたﾃﾞｨｽﾌﾟﾚｲに浮かんでいたのは。

番号のみの電話帳に登録してないものだった。





誰だろ…。

お店の誰かかな。

…またﾏﾈｰｼﾞｬｰのｼﾌﾄﾐｽで人が足らないとか言わないよね…？





出たくないような出なきゃいけないような。

そんなｵｰﾗを出したこの番号。





…気が進まないなぁ。

小さくため息を漏らすと、私は通話ﾎﾞﾀﾝを押した。





「…はい」

「あ、ゆずｻﾝ？」





ｹｰﾀｲから聞こえてきたのは。

出るのを躊躇した私とは違って。

私が出るのを待っていたかのような男の人の声。





「…はい？」





え？誰？

声に聞き覚えがないんだけど。

でも。

相手は私が“柚”だと知ってる。





「…すいません。どちら様ですか…？」





遠慮がちに聞いた私に。

電話の向こうの男の人が答えた。