恋する距離
「本当にお詫びとか、気にしなくていいよ?」


「ダーメ! 男に二言はないんだから」




私は今、和樹くんと食堂へ向かってる。
昨日のお詫びに昼食を奢ってくれるらしい。




夢じゃないよね? と、頬をつねってみたけど、ちゃんと痛かった。




「それにみのりちゃんて、いつもメロンパン買ってるでしょ?」


「な、なんで……?」


「俺もいつもカレーだから、仲間がいると思ってたんだー♪」




思いがけない彼の言葉に、思わず足を止めてしまう。




私のことを知っててくれた。もうそれだけでお腹いっぱいだよ……。




「早くいかないと、売り切れちゃうよ?」


「……うん」




立ち止まった私に、彼は振り向いて手を差し出す。




その手に触れたいのに、私は素直に手を出せない。




見兼ねた様に、彼は「早く、早く♪」と私の腕を掴んだ。




昼休みでごった返す廊下を、引っ張られながら走る彼との距離。




推定30センチ……。




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