光輪学院シリーズ・神無月の憂鬱
「依琉!? どうしたの? ウチに来るなんて」

離れの邸の玄関に、同じ部の依琉が来た。

相変わらずの美形ぶりに、生徒達がザワめく。

「お嬢、この方は?」

「あっ、お婆。私と同じ部の依琉。副部長をしているの」

「はじめまして。神無月のお祖母さま。依琉と申します」

依琉は礼儀正しく挨拶をする。

すると祖母は微笑んだ。

「これはこれは。お嬢から話は聞いています。奥の部屋へどうぞ。何か冷たいものでも出しますから」

「おかまいなく。ボクは道案内で来ただけですから」

「道案内?」

神無月が首を傾げると、依琉はスッと体の位置をズラした。

すると外には若い男女がいる。

「あの人達が用事あるみたいでね。ボクは近くを通りかかっただけ。ここの場所を尋ねられて、案内してきたんだ」

「ウチに…。そう、ありがと」

神無月は草履を履くと、外に出た。

「いらっしゃいませ。ウチにご用とか」

「ええ。ここには言葉や文字で、まじないをしてくれると聞いたものですから…」

男性の方が、弱々しく答える。

そして傍らの女性を見た。

「僕達、夫婦なんです。でも彼女がちょっと病気がちでして…。こちらのお守りはよく効くと聞いたものですから」

「…そうでしたか。少々お待ちください」

神無月は中に戻り、祖母に話をする。

「病克服のお守りが欲しいんだって。お婆、作る?」

祖母は鋭い視線で、二人を見た。

「そうだね。…まっ、それで気が済むなら良いでしょう。教室にご案内しといで」

「はーい」

神無月は二人を教室に通した。

そして祖母と二人を残し、退室する。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop