光輪学院シリーズ・神無月の憂鬱
「…依琉、あなたは何を<視>たの?」
「ん? ボクはあの旦那さんのが<視>えただけだよ」
依琉が言うには、夫の背後にはもう一人の彼の姿があったという。
不安そうに妻に付き添う姿とは逆に、楽しそうに嬉しそうに笑っている夫の姿。
そしてその夫には3人の女性の姿があった。
「3年目の浮気とはよく言ったもんだ。あの旦那さん、かなりの浮気性と見た。だけど妻は夫を愛していて、離婚なんてしないだろう。なら、自殺に追い込むしかないと考えた」
「奥さんが…病弱体質なのを利用して?」
「うん。小さい頃からよく病気していたのが<視>えた。だけど重い病気も怪我も一度もしていない。それが妻の強さと力なんだろうね。見た目はか弱そうだけど芯は強い―。夫にとっては厄介な部分だ」
そこでいったん麦茶でのどを潤し、依琉は続けた。
「だからわざと妻の病気体質を大袈裟にした。それで妻をノイローゼにして、自殺してもらうことにしたんだよ」
「でもその目論見も、全て台無しね。ウチに来てしまったんだもの」
「そうだね。夫は神無月やお祖母さんの力を信じちゃいなかった。まさか本当の能力者だとは、つゆほど思っていないだろうね」
「…これからどうなるんだろうね? あの二人」
「さあね」
依琉は肩を竦め、息を吐いた。
「離婚問題はもめるとヒドイって聞いたことがある。あの二人は特に、夫は別れたい、けれど妻は別れたくないという思いがあるから、余計にこじれる。だから夫はあんな行動に出たわけだが…」
そこまで言うと、依琉の唇が上がった。
「ここで全てが台無しになった。これから妻の体調は良くなるばかり。どんなふうになるのか、見てみたいものではあるけどね」
「下手な修羅場に顔を突っ込むのはおよしなさいな。ヤケドだけじゃ済まない時だってあるのよ」
「分かっているよ。それに今は部活の方が楽しいしね」
手をブラブラ振りながら、楽しげに言う。
「ん? ボクはあの旦那さんのが<視>えただけだよ」
依琉が言うには、夫の背後にはもう一人の彼の姿があったという。
不安そうに妻に付き添う姿とは逆に、楽しそうに嬉しそうに笑っている夫の姿。
そしてその夫には3人の女性の姿があった。
「3年目の浮気とはよく言ったもんだ。あの旦那さん、かなりの浮気性と見た。だけど妻は夫を愛していて、離婚なんてしないだろう。なら、自殺に追い込むしかないと考えた」
「奥さんが…病弱体質なのを利用して?」
「うん。小さい頃からよく病気していたのが<視>えた。だけど重い病気も怪我も一度もしていない。それが妻の強さと力なんだろうね。見た目はか弱そうだけど芯は強い―。夫にとっては厄介な部分だ」
そこでいったん麦茶でのどを潤し、依琉は続けた。
「だからわざと妻の病気体質を大袈裟にした。それで妻をノイローゼにして、自殺してもらうことにしたんだよ」
「でもその目論見も、全て台無しね。ウチに来てしまったんだもの」
「そうだね。夫は神無月やお祖母さんの力を信じちゃいなかった。まさか本当の能力者だとは、つゆほど思っていないだろうね」
「…これからどうなるんだろうね? あの二人」
「さあね」
依琉は肩を竦め、息を吐いた。
「離婚問題はもめるとヒドイって聞いたことがある。あの二人は特に、夫は別れたい、けれど妻は別れたくないという思いがあるから、余計にこじれる。だから夫はあんな行動に出たわけだが…」
そこまで言うと、依琉の唇が上がった。
「ここで全てが台無しになった。これから妻の体調は良くなるばかり。どんなふうになるのか、見てみたいものではあるけどね」
「下手な修羅場に顔を突っ込むのはおよしなさいな。ヤケドだけじゃ済まない時だってあるのよ」
「分かっているよ。それに今は部活の方が楽しいしね」
手をブラブラ振りながら、楽しげに言う。