信仰者
壱ノ章
机も椅子もない教室の入り口に立ち、田中八郎はため息を吐いた。


全く、厄介な事件が起こってしまったものだ……。


教室の窓には暗幕が引かれていた。


ついさっきまでこの教室には、10人ほどの死体が転がっていた。
ここは数年前に廃校になった小学校で、最近は誰も近寄っていなかったという。


「田中、こっちを頼む」

「はい」

八郎は若い刑事で、殺人を担当している。
この仕事に就き、色々な殺人を担当したが、こんな大規模なものは初めてだった。

上司の加藤清志が言った。

「お前も死体には慣れてきただろう?」

「はい、もう見慣れました」

最初は死体を見るのが嫌だった。
でももうそんな恐怖はなくなっていた。

慣れというものも恐ろしいな…。

八郎は心底そう思っていた。
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