1970年の亡霊
　そういった事もあり、証拠の隠蔽は、自ら事件を解決しようとしたスタンドプレイから出た行動ではないかとの見方をする者が多かったのである。

　スタンドプレイという部分で、ほんの少しばかり三山に同情出来る部分があるとすれば、組織内部に於ける三山の現状が上げられる。


　彼女のこれまでは、女性キャリアとして順調過ぎる程に進んで来たといえよう。寧ろ異例とも言えた。

　それが、佐多事件に関わった事によって、彼女の警察内部に於ける居場所が奪われてしまった。

　自分は必要とされていない……

　そういった鬱屈した感情が堆積して行き、それが今回のような行動に繋がったという一面もある。

　ただ、それらとは違う感情が、大事な証拠物件であるメモリースティックを加藤に渡した時にはあった。

　死の淵から戻った時、真っ先に加藤の名を呼んだのも、同様の感情が彼女の行動を支配していたのである。

　知らず知らずのうちに、三山の中で加藤が唯一無二の存在になっていた。

　この時点で三山はまだ、加藤に対する自分のそういった特別な感情や、心の動きに気付いていなかった。




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