1970年の亡霊
 2010年10月1日。この日起きた同時爆破テロは、全世界に報道された。

 警視庁が直接狙われた事は、警察幹部達に大きなショックを与えた。

 同時刻に爆弾テロにあった施設や場所が、テレビの臨時ニュースで次々と報道された。

 東京湾臨海工業地帯にある変電施設に石油コンビナート。更には都心部周辺の警察署等。

 各幹線道路は全面的に交通規制が敷かれ、道には都内各警察署及び、周辺県警から動員された機動隊員達で埋め尽くされた。

 混乱は更に別な混乱を生み、警察の指示系統は乱れ、五分前の命令が直ぐさま撤回されるといったような混乱振りであった。

 政府は緊急閣議を開き、総理大臣をトップにした臨時テロ対策室を設けた。

 召集を受けた大臣の中には、戒厳令の適用をも視野に入れるべきであるとの強硬意見を述べる者も現れた。

「戒厳令は大袈裟じゃないか」

 というのが大方の意見であったが、一方では防衛大臣の

「この非常事態をして、自衛隊による治安維持活動を行わなければ、現法律に定められている治安維持出動は何時行えばいいと言うのか!」

 との熱弁に肯く者も少なくなかった。


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