1970年の亡霊
 そういう後ろ向きな考えにばかり囚われていた私ですが、先日、ある人から手紙を頂き、ほんの少しではありますが、生きる勇気のようなものを頂けたんです。

 こんな私にも手を差し伸べてくれる人が居る……

 それだけでも尊い事なのだと、今更ながら知り、そういった方々を今度こそ裏切る事無く生きていかねば、そう気持ちを改めさせられました。

 自分の背中には、何人もの尊い命、人生が乗せられて居ります。それを放り出して逃げ回っていたから、あのような事件が起こり、新たに尊い命が失われたのです。

 自分がきちんと立ち向かってさえいれば。そういった後悔は当然ありますが、過去を悔やむばかりではなく、前向きに立ち向かう事も考えねばと。

 社会に戻れば、恐らく多くの好奇な目に晒されると思います。それに負けないように立ち向かうには、余程の覚悟が必要であると判って居ります。

 そして、思い出したのです。三山さんが、私の為になさってくれた事は、立場こそ違え、同じように好奇な目に晒される行動でした。それを考えた時、私は

 ああ、自分もやらなければ、生き抜かなければ……

 そう決心したのです。出てからの事はまだ具体的に何も決まって居りませんが、一つだけお約束出来る事は、老いた母と、残り少ない人生を送るという事です。


< 16 / 368 >

この作品をシェア

pagetop