1970年の亡霊
 三山は、一連の不可解な事件を掻い摘んで話し始めた。

「……という事で、彼女の死は事故死じゃなくて、何者かに殺されたのではないかと思うの」

「君が言うように、自衛隊が組織的犯行に加担しているにしろ、或いは、一部のグループが一連の事件に関係しているにしろ、彼等を容疑者とするには、状況証拠が極端に少なさ過ぎないか?」

「勿論、それは判っているわ。けれど、話の始まりは全て自衛隊がキーワードになっているのよ」

「まあ待て、川合俊子の部屋で元部下の三枝に殺されたのが自衛官だとしても、それを裏付ける物証が一つも無い。それに、死んだ川合俊子が、犯罪の臭いを嗅ぎ付けたJTCというサイトにしても、自衛隊関連だと立証出来ていないのだろ?それに、具体的な犯罪に繋がるものも無い」

「ええ。でも、彼女がこの件を調べ始めてから、全てが始まったの」

「しかし、事故死と所轄が判断したものを……」

「公安だか何だか知らねえが、ごちゃごちゃ御託並べねえで、協力するかしないか、いったいどっちなんだ?」

 慎重に言葉を選ぶ河津の煮え切らない態度に、それまで口を挟まなかった加藤の短気が爆発した。

「加藤さん!」

 三山が、身を乗り出さんばかりに河津に迫る加藤を必死に宥めた。

「現実に捜査官が二人も命を落とし、三山警視は二度も命を狙われたんだ!」

「それとこれは別ですよ」

 あくまでも冷静な態度を崩さない河津に、加藤の苛立ちは益々大きくなった。

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