1970年の亡霊
「身内の敵討ちも出来ねえヤローなんかに、力を借りる必要なんかねえぞ」

「君達だけでどうにもならないから、俺を呼んだ訳だろ?それが要らないとはな」

「喧嘩売ってんのか!?」

「二人とも止めて!」

「俺はまだNOともYESとも言ってない……」

「なら勿体つけねえで、とっととNOと言って出て行ってくれねえか」

「もういい加減にしてって言ってるでしょ!」

 三山の声が余りにも大きかったのか、たまたま隣の病室居合わせた看護師が驚き、

「時間も時間ですから、静かにして下さい」

 と言って注意された。

「知っての通り、今は本庁全体が爆破テロ一本になっている。特に、うちのような課は、捜査員全員が二十四時間体制を強いられているようなものだ。そんな中で、新たに本庁の捜査課が案件を抱えるのなら、それなりの理由付けが必要なんだ。個人プレイではなく、組織として動くだけのものがね」

「ならば充分過ぎる位あるわ。狙われたのは、私を含めて警視庁の捜査官よ。司法へ銃弾を放つという事は、国家に対するテロ行為と同じ。そういう位置付けで捜査名目が立つと思うのだけれど」

 昔から、こうと思ったら一歩も引かない女だった。

 そこに惹かれた事もあったなと、河津は話とはまるで別な事を考えていた。

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