1970年の亡霊
 手紙を読んだ三山は、この所の鬱積した気分が幾らか晴れやかになった。

 刑事の仕事のいろはを教えてくれた前嶋の言葉を借りれば、結果はどうであれ信じてやる事なのだと。

 本人が口で言う程、世間の目は前科者に対してそんなに寛大ではない。

 感情の部分と、現実の部分では大きな隔たりがあるからだ。

 が、それを言い訳にしては、又、元の木阿弥になってしまう。

 彼もその事を判ってはいるだろう。

 何も力になって上げられないが、信じ続けて上げる事だけは出来る。

 何時もより、ワインの量を過ごしてしまった。

 貴方が背負った罪の真実を私は明らかにしただけ……

 その結果、警察の面子を潰した張本人とレッテルを貼られ、閑職に追いやられたけれど、私は少しも後悔してなんかいないわ……

 でも、やっぱり捜査の現場に出られないのは、少し寂しい気持ちもするけれど……

 私って、警察官僚に向いてないのかな……

 キャリアなんかじゃなく、普通に叩き上げにでもなっていればよかった……

 叩き上げ……。

 三山はふと加藤刑事の事を思い出していた。



 
< 17 / 368 >

この作品をシェア

pagetop